無線従事者への道:第1級陸上無線技術士


[1陸技免許証表紙][1陸技免許証中身] 筆者の1陸技免許証。(悪用防止のため一部伏せております。)


資格のあらまし

この資格でできることは、一言、「無線設備の技術操作」とされている。名前に陸上と入っているが、陸上専用の資格ではない。 下位資格に陸上専用の資格があるのと、海上や航空の通信操作ができないことから、便宜上陸上の資格に分類されているだけだと考えている。 (陸上の通信操作には、モールス信号を使う場合やアマチュア無線を除いて、資格が不要なので現在資格が存在しない。) 自分の口とか手で相手と交信するための通信士の資格でなく、無線設備を調整したり測定したりするための技術者の技能証明である。放送局の送信機とか通信事業者などの回線にかかわる無線設備の調整・維持・管理の操作に必要となる。また、一言で説明ができる資格かよ、と思われる方も多いと思うが、これ以外のプロの無線の資格には必ず、なんだかの技術操作の制限があり、つまりはこの資格には制限がないので、説明が一言ですんでしまうのだ。日本国内の無線従事者の資格は現在23資格ある。そのうち22個は、「第1級総合無線通信士」があれば、カバーできてしまう。こちらの資格は通信操作がオールマイティであるのみならず、技術操作も一部の制限があるほか可能であり、もっとも取得が難しい資格といえるだろう。しかし、技術操作をオールマイティにするには、この「1陸技」でないと、いけないのである。また、技術を専門にする人にとっては、通信士資格の取得には専門外の勉強が必要になり、意味のない労力を要するため、陸上無線技術士を取得することになる。なお、アマチュア無線の操作に関しては、通信操作と技術操作を切り離せないという考えにより、個別の規定にて4アマの効力があるとされている。しかし、難易度は、比べものにならないので、誤解しないでいただきたい。

思い立ったは学生時代

筆者は子供のころ遠くの親戚の家に行ったときに、ここではテレビのアンテナがなんで垂直になってるのかと疑問になって、周囲の大人に聞いて困らせたことがあるらしい。垂直偏波で放送している地域なわけだが、子供ながらにこういうところを観察し、追い求めようとする性格だったのだろうか。そんなこんなで大きくなり、大学に入ったあたりでこの資格を知った。放送局の技術者が取る資格だということを知り、あこがれた。決められた単位を取れば、卒業の時点で当時の予備試験の合格の効力が発生すると知り、そのように授業を履修するが、半導体系の一部科目や、そして電磁波工学系の科目などを落としてしまい、その計画はいったん潰えてしまう。なんとか独学で予備試験からチャレンジしようと考えるが、本屋で問題集を見て、面食らってしまう。単位を落としたときの苦手意識が残っており、自分でできるか、まったく自身がなかった。放送の仕事に就けず、大学院に進学し、そしてメーカーに入社してプロオーディオ機器の仕事をし数年、この資格のことは頭から消えてしまっていた。しかし、この間に、当時ハンディトランシーバを持っている連れが2、3人いたこともあり、4アマの資格を取得した

社会人学習として

しかし、自分の会社員生活に大きな転機がやってきた。当時好調だった携帯電話事業のソフト部門への人事異動である。ここから波瀾万丈な時間が過ぎる。連日の深夜残業で体を壊し直接的な開発から離れる。そして、部署ごと子会社に出向。ところが、この子会社が、自社の社員に情報処理の資格取得を推奨しており、奨励金も出していることを知る。自分はここの社員でないので、奨励の対象外であるが、奮起するきっかけとなる。このごろ、会社の経営状態もテンパってくる。 そんな中、自分が直接的な開発から離れ、技術者として何を売っていけるのか。もし自分の会社がつぶれたら、果たしてよそで食っていけるのか。 会社だけでなく、自分にも危機感を抱くこととなる。これが、資格へのチャレンジを決めたきっかけだ。 といっても、情報処理の資格ではなく、本来自分が得意なはずの、通信関係の資格を取得しようと奮起する。 必ずしも周囲の面々と同じことをやる、のでなく、自分の得意なところを伸ばして、生き延びていくのが得策でないかと。周りに合わせたところで、また周りの情勢が変わったらどうするのだ。だからこそ、自分というのをはっきりさせなくてはいけないと、強く感じたのだ。 プロの無線従事者資格について調べると、「第1級陸上特殊無線技士」(1陸特)なる資格が、自分の業務に直接関係せずとも携帯電話業界によく関係することを知り、問題集を見て、いけそうという感触にて勉強を始め、1陸特を取得してしまう。ということは、次は1陸技しかない。学生時代とは試験制度が変わっており、予備試験・本試験制度がなくなり、予備試験は「無線工学の基礎」という1つの科目になってしまっていることを知る。またマークシート方式であり、仕事の合間にでも勉強すればいけるのではと考える。といっても、決して試験を甘く見たわけではない。 今挑戦しなければ、いつ挑戦するのか。いったんはあきらめた資格だが、こういう情勢になった今、自分はなんとしてでもこの壁を乗り越えなくてはならないという、自分への挑戦課題として、再び舞い降りてきたのだと、考えた。 問題集を購入。勉強を始め、ようとするが、せっかく勢いに乗ってきたので、まず手慣らしに1アマを取ろうと考える。しかし、電気通信術の訓練に時間をかけすぎてしまい、この間に1アマの工学の勉強をそれなりに意識してやったものの、1陸技専用の勉強開始は、2004年10月か11月ごろ、1アマの試験勉強中かつ1陸技の試験3か月前くらいになってしまう。

最初に取りかかった本は東京電機大の「合格精選320題 第一級陸上無線試験問題集第2集」であり、これはなんとか短時間で終わるが、そのあと過去問を解こうとしてもまったく歯が立たない。1陸特のときは問題集1冊で、問題集の解説で納得ができ、成功を収めたが、1陸技はまったく歯が立たない。年末年始実家にいた間に起こったピンチであり、Uターン後あわてて教科書の「1・2陸技受験教室」を買ってしまう。もっと早く買っていればよかった。勤務先での休憩時間、週末、そして、冬休みもつぶして、教科書→問題集と進む。だいたい、会社でこんな分厚い問題集をやったり、そうでなくても、勉強をするような人は見たことない。自分だけである。しかし、恥ずかしいと思っていられない。このころ、ブログも始めるが、ここにどこまで勉強したか記録する。数式の記載もできるので、大事な公式を書く。普通の人はノートに書いて覚えるようなことなのだが、現代のツールはいかんなく活用する。

また、こうした受験勉強をしながらも、毎年行っているInter BEEにて、いままでプロオーディオ中心の見学だったのを改め、送信機器に着目。カセグレンアンテナなどを生で見たり、地上デジタル放送の送信アンテナのVSWRはアナログ放送より甘いので広帯域にできるなどの、生きた話を聞いたりした。筆者は受験勉強ばっかりしてても息がつまる性格なので、こういう機会を利用したわけだが、受験勉強が得意な人にとってもきっと役に立つと思う。

いずれにせよ、他の人より残業は少ないにしろ、土日だけの勉強では絶対間に合わない。使える時間はとにかく使いまくった。 喫茶店や某ドーナツ専門店などにこもる。試験会場近くの台場にホテルも取ってしまう。なんとしてでも一発で通りたい。そんな一心で、本番を迎える。 本番のことは2005年1月27日の日記2005年1月28日の日記を参照。

問題を解いた印象は上記の日記に書いているが、とにかく無線工学の基礎の計算が多いことと、無線工学Bの解き方のわからない問題で面食らい、生きた心地がしなかった。一方滑り止めで受験した2陸技は、教科書通りの素直な問題が多く、計算も楽で、誘導尋問的に穴埋めができた感じだ。結果2月24日に1陸技と2陸技の合格通知を手にし、翌日1陸技の免許を申請し、3月9日に免許証を手にすることができた。割印がありつつも写真がしけた感じで印刷された安っぽいものだが、確かに1陸技だ。2日早く来ていれば5月受験の工事担任者試験の科目免除に間に合ったわけだが、まずは目標達成だ。(なお、この5月の工事担任者試験では、免除にしたかった基礎の科目をまったく受験勉強せずにアナログ・デジタル総合種を受験したが、ストレートに合格してしまった。知識が頭に残っていたためである。)

結局大事なこと

過去問、とくに3年以内のもの
試験勉強の最後の最後で力尽きて、近年の過去問をおろそかにしないこと。
教科書
1陸特のように問題集だけで乗り切ろうとしても、厳しい。
興味
受験勉強っぽい勉強も大事だが、自分の興味のあるところ(放送設備とか)から攻めるのも、モチベーションを持つ意味で重要だと思う。
ほかの資格のために勉強したこと
法規ではこれが大半であり、独自問題は多くない。独自問題の、衛星のビームの範囲とか空中線電力の許容誤差などに集中的に取り組むこと。
モチベーション
逆境とか、無線でも情報処理でもとにかく何か資格に打ち込む人が周囲にいることとか、自分を奮い立たせるもの。逆に周りにそういう人がいなくても、自分の目標を貫く意志。「どうして俺は頑張ってるんだろう」とふと思うくらいの勉強をすべきだ。

免許証を手にして

筆者はこの資格を直接使う仕事をしているわけではない。では、この資格にはどういういう意味があるのか。大学を出てとんとん拍子に会社に入り、とんとん拍子に結婚し、とんとん拍子に出世しながら好きな仕事を何十年も一筋にやれるとは限らない世の中だ。会社の都合で何が起こるかわからないのが現実であり、これに勝てない人は、自分の本来の技術とか可能性を腐らせてしまうことにもなりかねないだろう。大手といわれている電器メーカーですら、これは事実なのだ。そんな中、自分は何の技術者なのか、ということをはっきりさせるための、1つの証明書を手にしたという感じだ。 これだけで無線技術の仕事ができるわけではないが、絶対プロフィールについて回るわけであり、何が起こるかわからない人生において、この分野に通じているという客観的な証明は、いつでも役に立つよう、思い立ったときこそ取っておくべきなのだ。 しかし、いちばん強調したいことは、その免許自体を腐らせてはいけないことである。これは、常に試験の問題が解けるようにせよという意味でない。無線技術は年々新しくなるのだ。移動体通信をはじめとした電気通信の技術とか、地上デジタル放送などの技術とか、あるいは街とか旅先などで見かけたアンテナに興味を持つ。そして自分で調べたり、あるいは何のアンテナなのか理論的に想像するとか、そんな心構えが大事だと思う。まさに子供のときよその地方で見た、垂直偏波のテレビの受信アンテナに感じたような疑問を、疑問のまま忘れてしまってはいけないのである。 個人的には、13年越しで手にした資格だ。ある意味、大学で失ったものを取り戻したともいえる。社会人になっても、学ぶということを忘れてはいけないし、自分次第で、どれだけでも学ぶことができるのだ。

受験歴

2001年9月:第4級アマチュア無線技士 合格→免許
2004年7月:第1級陸上特殊無線技士 合格→免許
2004年8月:第1級アマチュア無線技士 不合格
2004年12月:第1級アマチュア無線技士 合格→免許
2004年12月:第2級アマチュア無線技士 合格
2005年2月:第1級陸上無線技術士 合格→免許
2005年2月:第2級陸上無線技術士 合格

教材

「1・2陸技受験教室」シリーズ、東京電機大学出版局
工学に関してはこれなしでは勉強できなかった。同趣旨の工学の教科書は現在電気通信振興会からも出ているようだが、入手が容易だったので選んだ。法規のは使用しなかったが、評判はいいらしいので苦手な方は試してもいいかもしれない。
無線従事者国家試験解答集「第一級陸上無線技術士」、電気通信振興会
上記の教科書で仕上げてから、必ず実際の過去問に挑まなくてはいけない。特に上記の教科書の発行後より新しい問題(2002年以降)の問題はこれなしでは勉強不可能。試験後に同会発行の月刊誌「電波受験界」で特集される内容と同じだと思われる。
「写真で学ぶアンテナ」、清水保定著、電気通信振興会
さまざまな種類のアンテナの名前とか性質を知るのに役立った。軽く読んで楽しめる本だが、案外受験勉強にも使いやすい。準教科書といってよい。
サンタ堀池ホームページ
放送局の送信所巡りの写真が充実している。スーパーゲインアンテナとかスーパーターンスタイルアンテナとかの実例がたくさんあり。
「第一級・第二級陸上無線技術士用 電波法規の答え方」、電気通信振興会
記述式時代の試験を意識しているようで、あんまり現行の試験対策に使いやすいとは思わない。試験に出なさそうなことも書かれている。気休めに読むのがいいだろう。
「合格精選320題 第一級陸上無線試験問題集第2集」、吉川忠久著、東京電機大学出版局
この本をやり遂げることから試験勉強を始めたが、どうしても必要な参考書とは思わないし、この本だけでは十分な力はつかないと思う。すでに勉強したことをたたき込むため補助的に使うか、もしくは2陸技レベルの勉強をしてある人が1陸技に手を伸ばすのに使うのがよいだろう。

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